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​異世界間転送

​異世界間転送

◆概要

異世界間転送とは、ある世界から別世界へ渡ることを指す。

異世界間転送には、別世界へ渡るための相応のエネルギー、そして転送するものを異世界の法則に適応させるために変換という工程が必要となる。
特に知的生命体の異世界間転送は、変換の工程において莫大なエネルギーが必要になるという性質から、非常に困難を極める。このため、異世界間転送を安全かつ意図したとおり自由自在に行える生命体は現在のところ存在しない。例外として世界存続システムによってつくられた外なる守護者たちは、世界存続システムのサポートによって自由に異世界間転送が可能となっている。

◆​異世界間転送に必要な工程

異世界間転送を実現する様々な理論・方式があるが、いずれにおいても3つの工程をクリアする必要がある。

  • 世界膜の突破
    世界膜は世界を覆う膜であり、ほとんどの世界膜は知的生物は通常通過できないようになっている。この世界膜を突破する為、貫通する、通過できる物質に偽装するなどの技術が必要になる。
    この工程は転送元の世界膜、転送先の世界膜に処置する必要がある。

  • 異世界間物質の突破
    世界と世界の間を満たす異世界間物質内では廃棄物運搬や情報通信などが行われている。異世界間物質それ自体は有害ではないが、そこを流れる廃棄物等は危険なものが少なくない。

  • 転送先の世界の法則に合わせた変換
    転送先の世界の法則に合わせて物体の変換を施す必要がある。
    例えるならば、三次元の体をもっている地球の人間が二次元世界へ行くには、二次元の体に変換しなければいけない。
    転送元と転送先の世界の法則が大きく変わらなければ無変換でも存在できる可能性はあるものの、見た目・動き・感覚・記憶等に異常がでたり、表面上問題ないように見えて致命的な問題が発生している場合があるため、原則的には変換が推奨される。

複雑性

異世界間転送における複雑性とは、ある物体がある物体たらしめる情報量の事である。

物体は構成要素と構成要素同士の関係性によって形作られる。人間を例にすると、姿かたち・それを構成する物質・経験や記憶などが構成要素である。この構成要素同士の組み合わせ…つまり関係性の働きによって新たなアイディアを生み出したり、運動を行うなどの活動を行うことが出来る。これらの構成要素と構成要素同士の関係性が多ければ多いほど複雑性が高くなり、少なければ少ないほど複雑性は低くなる。

人間を含む知的生命体は経験や記憶を元に様々な思考を行い、更にその思考を何らかの形で表現する。その組み合わせや組み合わせでの表現結果は数多となり、複雑性が非常に高くなりがちである。
複雑性が高くなるほどに、異世界間転送時物体の変換に必要なエネルギーも極端に増大していく。知的生命体が異世界間転送をすることが難しくする要因ともなっている。

ゲート

◆概要

異世界間転送における​ゲートとは、異世界間伝送方式の一つである。
本来ゲートとは出発地から到着地までを繋ぐ超高速移動専用通路の総称であり、行先も異世界のみならず並行世界間・世界内も含めるものであるが、本項目では異世界間伝送の利用されるものについて解説する。

◆ゲートによる異世界間転送の工程

ゲートの作り方・見た目などは様々あるが、おおむね以下の工程で作成・利用される。
 例)世界Aの物体が世界Aから世界Bへ異世界間転送する場合

  1. 世界Aから世界Bへゲートを作成
    世界Aと世界Bにそれぞれ出入口となる門と、それを繋ぐ超高速移動可能な通路を作る。これをゲートと呼ぶ。
    適切に作成されたゲートは世界膜を貫通し、ゲート内は世界の法則・世界間物質とそこを流れる廃棄物等の影響を受けない。
    イメージとしては、ボール(世界)とボールを繋ぐホース(ゲート)。

  2. 世界Aの物体を世界Bの法則にあわせて変換
    ほとんどの場合、変換は環境に影響されないゲート内で行われる。

  3. ゲート内の通路を移動
    内部をどう移動するかはそれぞれの方式によるが、超高速で移動できるようになっている。

◆森生まれのモンスターとゲート

森生まれのモンスター達は生まれながら単独でゲートを作成できるものの、不安定なものしか作れない。

単独で作ったゲートの事故率は非常に高い。事故のケースで特に多いのは、ゲート強度が不十分でゲートが崩壊し押しつぶれて死亡するケース、ゲートが壊れて異世界間物質内に放り出されそのまま廃棄場へと流されて死亡するケースである。死に至らずとも、異世界間物質内を流れる廃棄物の影響を受けて怪我や病に至ることもあれば、変換に失敗をして異形や災害と化すことある。加えて時折移動予定とは別の場所にたどり着くなどの失敗もみられる。
このため、現在はゲート生成装置という補助的な装置を使い、ある程度安定・安全なゲートを作成している。

トートアム式異世界間転送

◆概要

トートアムとははじまりの森のモンスターによる異世界間転送研究チームであり、古くから多種多様な異世界間転送を考案してきた。

現在のトートアムは、ゲートによる異世界間転送法の研究・実用化を主軸として活動しており、はじまりの森のモンスター達の主力として使われているゲート生成装置もまたトートアム開発の技術の結晶である。
また、新たな技術として人間の特性を利用した異世界伝送方法を開発・実証実験中である。

​ゲート生成装置

ゲート生成装置とは、はじまりの森のモンスターのみが扱える、ゲートを作成する際の補助装置である。
森生まれのモンスターは独力では不安定で危険なゲートしか作成できないため、そのゲートを補強・安定化・到着座標修正の補助を行っている。​

  • 見た目
    ピンポン玉のような球形で、幾何学模様が淡く光っている。
    利用するモンスターの体に押し込めると、自然と体内に入って消える。手術等で摘出しようとしてもそれを見つけることはできない。モンスター本人が取り出したいと願えば体内から出てきて、再び認識できる形をとる。モンスターが体に埋め込んだまま死亡すると、消失する。

  • 利用方法
    体内に押し込めて着用する。
    その後は普段通りゲートを作成しようとすれば、自動的にゲート生成装置が必要なゲートの補強・安定化・到着座標修正を行い安全なゲートを作成することができる。

  • 問題点
    モンスター達にとって既知の世界でないとゲート生成装置が働かない。これは、モンスターがゲートを作成した際、意図した移動先世界に確実に接続されているか過去の到達世界のデータベースの座標を元に確認しており、移動先の座標がデータベース上にないなどの理由で確実な接続が確認できないと判定されると強制的にゲートを閉じるように設計されているため。
    トートアム式の異世界間移動は、無駄に命を落とさないように安全性を高めて設計されている。

人間の特性を利用した異世界伝送の開発

近年、トートアムは人間には不思議な力があることを発見した。人間は、睡眠中夢を見ている時、または何かを想像している時、無意識にゲートを開いて異世界を覗いていることがあるという。
このゲートを知的生命体の異世界間転送に利用するにはあまりに小さいものであったが、理論上は今までの伝送技術とは比べ物にならないほど省エネルギーで利用できることがわかった。

人間によって開かれた小さなゲートは一度開かれれば放っておいても数日は閉ざされない為、その間にゲートの先の世界を特殊な望遠鏡で観察調査、ある程度安全性が確保できそうな世界であればゲートにエネルギーを加えゲートを拡大、実際に有志のモンスターを送り込んで現地調査をしている。現在、積極的に協力してくれるグループ”ぶらびーず”達の力も借りつつ実証実験とさらなる理論研究を進めている。
この技術は(今のところ)既存のゲート生成装置に必要情報を追記するだけで扱えるようになっている。

人間の謎

人間に見られる、夢や想像を通じてゲートを開くという力は他の知的生命体にはほとんど見られない特性である。この特性は人間以外でもごく稀に見られるが、その種全体において普遍的に見られるものではない。

加えて、異世界間を覗ける程度の機能に収まっているとはいえ、超省エネルギーでゲートを開くことができることは、トートアムが得ている知識では常識的に考えられないことだった。

この力が何故人間に備わっているのかについては様々な仮説がある。

・人間の知性のみでは到達しえないアイデアや技術を得るために獲得したもの

・人間の想像によって新たな異世界や並行世界が誕生している

・異世界の知的生命体(人間達が語る一部の神・精霊・霊魂なども含む)と交信するため

他にも仮説はあるがいずれも決定的ではない。


加えてもう一つ不可解な事象がある。
はじまりの森のモンスターの誰かが一度でも来訪したことがある異世界は、現在利用されている現在主流のゲート生成装置を利用すれば再訪するこができる。にも関わらず、人間の開いたゲートのたどり着いた一部の異世界については、ゲートで行先を指定したとしてもゲートが開く気配すら無い状態となる(その異世界を行先とするゲート生成が不可であって、その異世界にたどり着いた状態から脱出するためのゲートは生成可能)。このような世界へ再び来訪にするには、人間達に同じ世界を想像してもらい改めてゲートを開いて行くほかないが、たどり着いた先は必ずしも同じ世界ではなくよく似た別世界であることもある。
ゲートの行先に設定できる異世界と、設定できない世界の差異は一体なぜ起こるのか今後の研究による解明が待たれる。

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